世界最大規模のゲーム業界カンファレンス Game Developers Conference2018レポート

2018年3月19日~23日、アメリカ・サンフランシスコで開催された「Game Developers Conference(以下GDC)」にfluctの今井(執行役員)と重崎(アプリソリューション本部 本部長)が参加してきました。GDCとは、世界各地から26,000人以上が参加する世界最大規模のゲーム業界カンファレンスです。

Game Developers Conferenceとは

GDCは世界最大規模のゲーム業界カンファレンスで、言うなれば東京ゲームショウのグローバル版です。会場はアメリカ・サンフランシスコのモスコーンセンターで、500社以上のブースが並び、800以上のセッションが開催されていました。
ゲームディベロッパーだけでなく、周辺領域のゲーム関連事業や広告事業者も多数参加しています。もちろん日本からも多くの企業・関係者が参加していました。

GDC会場

▲GDC会場入り口

 期間中は世界中から多くの会社が集うため、会場外でも付近のホテルロビーやカフェでアポイントを設定することができます(事前にLinkedinやfacebookを活用してアポイント打診することが一般的です)。
サンフランシスコにオフィスを構えるUnityやCheetahmobileは期間中に自社イベントを開催したり、多くの会社がパーティを主催しており(しかも飲み放題&ケータリング付き!)、そこでも効率よくネットワーキングをすることが出来ます。だいたい、1日に3~5つのパーティーが開催されていたので、まさに街中がGDCムードで盛り上がっていました。

GDC開催中のサンフランシスコ市街

▲GDC開催中のサンフランシスコ市街

 今回特に目立ったブースはVR/AR。FacebookやGoogle、SONY(Playstation)など巨大なブースで展示をしていました。また、PC/コンソール向けゲームのブースも多くあり、ゲームディベロッパーのブースのうち8-9割がPC/コンソール、1-2割がモバイル向けという印象でした。ブロックチェーンを活用したサービスを提供する会社も5社ほどあり、ゲーム市場の最前線を肌で感じることが出来ました。

総括

海外展開している多くのディベロッパーの話を聞いたまとめです。

  • 日本市場はユーザーも多く非常に魅力的だがローカライズの障壁が高いため、グローバル(英語圏、EU含む)で成功してから最後に検討したい、と各社口を揃えていた
  • モバイルゲームにおいても広告マネタイズは重要と捉えられており、関心が高い
  • 日本などグローバル比較で広告在庫ボリュームが少ない地域の収益性改善は優先度が低そう

Google、facebook、Amazonといった巨大プラットフォーマー勢の本気度が、ゲーム市場においても感じられました。これについてはセッショントピックスでも紹介したいと思います。

Google:
ARCoreGoogle Maps APIPoly等でゲーム開発をサポート&firebase、GCPといったインフラも強化
facebook:
Oculus社でVRゲームに注力&本体facebook MessengerのInstant Games強化&Monetization Managerを活用した分析と広告配信のソリューション(like firebase)の提供
Amazon:
AWSの新サービス「Amazon GameOn」でeSportsに参入したいゲームディベロッパーをサポート

ゲームアプリのマネタイズ方法については、Google・facebook共に課金+広告のハイブリッド型マネタイズを提唱していました。また、広告事業者以外でもマネタイズエンジンになり得るプレイヤーが複数登場していて、中でも「eSports活用 by Skillz」「リサーチ型オファーウォール by TheoremReach」「EC型オファーウォール by shopify」など、fluct社としても連携を検討していこうと思います。
広告マネタイズ手法についてはウォーターフォールにとって代わる(ヘッダービッディングに近しい)機能が大きなトレンドとなりつつあります。プラットフォーマーだとAdMob, MoPubが、独立系だとFyber, Appodealがほぼ同時期にリリースをしていたのが印象的でした(後述)。
Fyber「Fairbid」
出典:fyber.com
各社が推していた広告フォーマットは「動画リワード」、「プレイアブル(※広告の中でプレイが可能なフォーマット)」の2つです。アプリ広告において、次の主戦場になると思われます。

気になったトピックス

DUOPOLY(広告市場を支配する2大プラットフォーム)と言われるGoogleとFacebookのセッションについて、いくつか気になるトピックスがあったので以下に紹介します。

Googleが提供するゲームデベロッパー向けソリューション

ARCore

  • Google社は2014年からAR技術の研究・開発に力を注いできた
  • AR技術はスマートフォンを通じて、現実世界でのゲームやエンターテイメントに大きなシフトをもたらすだろう
  • そんな背景から開発・提供されたのがARCoreで、Googleが提供するモバイルARプラットフォームである
  • 現実世界にAR技術を使って仮想オブジェクトを重ねることが可能になる(ポケモンGOをご想像ください)
  • 中国にも2018年後半に展開予定
  • 開発環境はandroid studi、Unity、Unrealに対応

Poly API

  • 3Dのオブジェクト開発はまだまだ多くの課題がある
    • コストがかかる、必要以上のオブジェクトをセット売りされる、まだまだ技術的に不完全、利用に時間がかかる
  • これを解決するために開発されたPoly APIは3Dオブジェクトのフリー素材のようなサービス(API)
  • 多くのゲームデベロッパー、クリエイターの作業時間を短縮させることが出来るだろう

Google MAP API

  • Google Maps APIsが現実世界でのゲーム開発をサポート
  • AR技術はスマートフォンを通じて、現実世界でのゲームやエンターテイメントに大きなシフトをもたらすだろう
  • リッチ且つ正確な地図表現をAPIで提供
  • グローバルスケールでGoogleMapsのデータさえあれば作れる
  • location情報も持ってるからゲームにあわせたキーとして使える
  • 世界中のどこでも対象
  • metadataを扱っているからカスタマイズが可能になっている
  • とにかくカスタマイズが簡単で、ボタン一つ押すだけ

Googleが提唱するハイブリッドモデルとソリューション

ハイブリッドモデルについて

  • 広告実装するモバイルゲームアプリ数は+50%と大きく伸びている
  • 広告は非課金ユーザーをマネタイズする素晴らしい手法である
  • アプリ内課金と広告の最適なバランスを見つけよう
    • 事例として、広告設置で25%収益がUPしている

動画リワードの与える価値

  • ユーザーは価値あるアイテムが無料で手に入る
  • ディベロッパーは新たな収益源、そしてユーザーエンゲージメントを高める
    • セッション期間が20%伸びる
    • トータルの収益が40%伸びる
  • 広告主は広告効果を高められる

リワード広告の新フォーマット

  • プレイアブル広告
  • 複数の動画オプション

Open Bidding Beta

  • 問題:メディエーションが複雑化している
    • 多くのSDKを実装
    • 複雑化するウォーターフォール実装
    • 複数プラットフォームにまたがるレポートや支払い
  • Open Biddingはメディエーションを超えるadmobのプログラマティックアプローチ
    • 過去の平均価格ではなくimpごとにリアルタイムな価格競争を実現
    • より少ないSDKで
    • 最小のレイテンシーでユニファイドオークション
    • レポートや支払いもシンプルに
    • SmaatoとIndex ExchangeとOpenXがβパートナー
    • AdColonyやVungleが参画予定

Facebookが考えるゲーム広告

Audience NetworkのOverview

  • 2019年のゲーム広告は69億USドルで2014年から+97%の成長
  • ユーザーは広告を嫌がらないのか?
    • ゲームユーザーの73%はゲームに広告モデルが入ることに好意的だ
    • ゲームユーザーの71%は動画リワード広告を見ることが課金よりも嬉しいと感じている
    • ゲームユーザーの62%がいつも、あるいは時々報酬を受け取るために動画リワード広告を見ることを選択している
  • フォーマット
    • ネイティブ広告
    • インタースティシャル広告(インスタントゲームでサポート)
    • バナー広告
    • 動画リワード広告(インスタントゲームでサポート)

Monetization Managerの紹介

  • マネタイズを可視化し最適化するためのツール
  • ユーザー体験を高める
  • より細分化されたデータで
  • さまざまな形式でデータ出力が可能
  • ビジネスを総合的に理解する
  • Googleの提供するfirebaseに似たサービスで、ヘッダービッディングとメディエーションもある模様

動画リワード広告実装ポイント

  • ユーザーが何を得られるかはっきりさせよう
  • 動画見たらコインが得られる、ダイヤが得られる、など
  • 動画リワード広告実装ポイント

    • ユーザー体験を考慮
      • 思わず動画が再生することがないように
      • 動画再生まで2ステップ用意しよう

    ユーザー体験を考慮

    • 情報を正しく伝えよう
      • もし報酬を与えられない場合はユーザーに伝えよう
        • Sorry, no ad is available at this moment(申し訳ありません、現在ご利用いただける広告がありません)

    情報を正しく伝えよう

    • ゲームバランス
      • リワード機会が多すぎたら価値下がってしまう
      • リワード広告を一度見たら、10分待たせるなど

    参加した感想

    グローバルのマーケット中でも日本はアプリ内課金率・金額共に高く、ゲームアプリで広告マネタイズを用いるディベロッパーはまだまだ少ない状況です。しかし、今回参加したGDCでは、Googleやfacebook等の巨大プラットフォームが広告マネタイズを提唱したり、大きなゲームディベロッパーが当然のように広告マネタイズの話をするなど広告活用の波は徐々に近づいているように感じました。
    日本で広告導入を懸念するディベロッパーの多くは「課金率低下」や「ユーザー離れ」、「ゲームの世界観が壊れること」をボトルネックに感じています。広告事業者としてはそうした要素を払拭する手段を用意し、ディベロッパーのビジネス成功に寄り添っていけるよう尽力していくべきだと感じました。「メディアの成長を共創する」をミッションに掲げるfluctとしても、こうしたソリューション開発に取り組んで行きたいと思います。


    いかがでしたでしょうか。fluctでは今後も注目を集めるカンファレンスに参加しレポートを公開して参りますのでお楽しみに!